
同じポンプを中東、北米、東南アジアへ出荷すると、銘板の排気速度が国内カタログと一致しない——こうした問い合わせが毎月数件ある。違いはポンプ本体ではなく、電源周波数にある。50Hz と 60Hz では同期回転数が 20% 異なり、容積流量もそれに伴って変化し、出力、騒音、温度上昇も影響を受ける。
変更すべき点は三箇所だけである。排気速度をどの数値で取るか、出力を変更する必要があるか、電圧と配線をどう確認するか。以下の数値はすべて製品ページの 50/60Hz の2列から取っている。
一、まず回転数を確認する
誘導電動機の同期回転数は周波数に比例する:n = 120f / p。4極機は 50Hz で同期 1500 r/min、60Hz で 1800 r/min となり、すべりを差し引いた値が銘板値になる。2周波数対応の表記がある機種はそのまま照合する。DPL-2V18/2V28 は 1440/1720 r/min、DPL-ZS150 は 2950/3600、DPL-WSU2000 は 3000/3600。
オイルフリーVシリーズ(V8、V10、V16、V25、V40 と L シリーズ)は 50Hz の 1420 r/min のみ表記している。60Hz の実際の回転数は最終的なモーターにより決まるため、発注時に確認し、自分で 1704 により推算しないこと。
二、排気速度はどれだけ上がるか:1.10 から 1.30 で、一律の係数ではない
| 機種 | 50Hz | 60Hz | 比率 |
|---|---|---|---|
| V0025A | 20 | 26 | 1.30 |
| V8 | 6.8 | 8.6 | 1.26 |
| ZS150 | 140 | 175 | 1.25 |
| V0063 | 63 | 75 | 1.19 |
| V0155 | 150 | 175 | 1.17 |
| V16 | 16 | 18.2 | 1.14 |
| V40 | 40 | 45 | 1.13 |
| V0100 | 100 | 110 | 1.10 |
| LC1200 | 1200 | 1440 | 1.20 |
回転数が 20% 上がると理論排気量も 20% 上がるが、すき間からの逆流、バルブ抵抗、ベーン端すき間の漏れは同じ比率では変化しない。小排気量機種は幾何流量が小さく、損失の割合が拡大されるため、比率はむしろ高くなる(V0025A は 1.30)。大排気量機種は漏れが大きく、実効排気速度が引き下げられる(V0100 は 1.10 にとどまる)。
ルーツブロワは 1.20 で安定している。LC250 250/300、LC500 500/600、LC1200 1200/1440、LC2600 2600/3120、LC4200 4200/5040。2つのローターは非接触で、すき間逆流が総ガス量に占める割合は小さい。
もう一点、見落としやすいのが、表の値は定格点の排気速度であり、60Hz での増加分は粗真空領域で顕著だが、到達圧力に近づくと差は小さくなることだ。V0100 のガスバラスト停止時の 0.1 mbar といった指標は、すき間と油シールで決まり、回転数では改善しない。より低い到達圧力が必要な運転条件では、周波数を上げて解決しようとせず、2段ポンプに変更するかルーツブロワを直列に接続すべきだ。
三、計算例一:同じポンプで電源網を変更
包装ステーションで、管路を含むチャンバー容積 0.5 m³、1000 mbar から 300 mbar まで排気、DPL-V25(25/30 m³/h)を配置。等温と仮定して t =(V ÷ S)× ln(p1 ÷ p2)で概算する:
- 50Hz:S = 25 ÷ 3600 = 0.00694 m³/s、t = 72.0 × 1.204 = 86.7 s
- 60Hz:S = 30 ÷ 3600 = 0.00833 m³/s、t = 60.0 × 1.204 = 72.2 s
1回あたり 14.4 s の差があり、毎時 60 サイクルなら 14 分の差になる。逆に注目すべきは、60Hz のデータで組んだタクトを前提にすると、50Hz の現場へ出荷した装置はそれだけ遅くなることだ。見積前に現場周波数を一度確認すれば、やり直しを一巡省ける。
ここで計算しているのは公称排気速度である。実際には管路の圧力損失、フィルター抵抗、被排気物からの放出ガスも差し引く必要があり、現場実測は通常計算より 10%~20% 遅い。この余裕分は別に確保し、周波数による差と混ぜて見積もらないこと。
四、計算例二:一律に 1.2 を掛けるとどこが誤るか
60Hz 現場で正味排気速度 105 m³/h が要求される場合。×1.2 で逆算すると、V0100 は 120 となり、表値 110 に対して 9% 高く見積もる。V40 は 48 となり、表値 45 に対して 6.7% 高く見積もる。保守方向でも誤る。V0025A は 24 となり、表値 26 に対して 7.7% 低く見積もり、余裕を無駄に取ることになる。排気速度は表で確認し、1.2 は粗い上限推定としてのみ使う。
五、出力:ZS150 は十分に確保する
周波数が 20% 高くなると、軸出力は 20% だけでは済まない。ZS150 の製品ページには 50Hz で 3.5 kW、60Hz で 4.8 kW と明記されており、37% の増加となる。チャンバーがオイルフリーのドライポンプでは、回転数が上がると圧縮熱とすき間逆流損失が速く増える。60Hz 現場に ZS150 を配置する場合、モーター、配電、熱保護の整定はすべて 4.8 kW を基準にする。
その他の機種は 50Hz 出力のみ表記されている(V8 0.28 kW、V16 0.38 kW、V25 0.75 kW、V40 1.5 kW、V0100 3.0 kW、V630B 15 kW)。60Hz でも同じ出力を適用するかは最終的なモーターで確認する。
六、電圧、騒音、接続部
- 電圧:LC シリーズは三相 220-240 / 380-415 / 460V。460V は 60Hz 市場で一般的な仕様である。2V80、2V275、V0160–V0302 は 220/240V、380/415V で、460V の現場に配置する場合は事前に伝える。V630B は 380–400 / 660–690V および 415V。
- 騒音:V0160 は 70/72 dB、V0302 は 74/76 dB と表記され、60Hz では 2 dB 前後高くなる。防音と操作位置は高い方の値で計画する。
- 接続部:G3/8″、G3/4″、G2″、DN100 は周波数によって変わらない。端子箱の向き、ファンカバーの空間は変わる可能性があるため、梱包前に外形図を一度確認する。
- モーター:60Hz 現場では 440~480V がよく使われる。巻線の絶縁等級、端子の仕様、熱保護の整定は現地の電源網に合わせて確認し、380V の構成をそのまま出荷しない。
七、発注前に確認する三項目
- LC ルーツブロワの一部機種は 60Hz 地域には適用できない(製品ページに記載済み)。機種ごとに確認し、シリーズ単位でまとめて判断しない。
- オイルフリーVシリーズの 60Hz 回転数と出力はすべては示されていないため、構成ごとに確認する。
- 60Hz と非標準電圧、非標準接続部が同時に発生する場合は、構成と納期を併せて確認する。
選定は三つを送れば決まる。現場の周波数と電圧、要求される排気速度と目標圧力、ガス種類と連続運転時間である。周波数を書き間違えると、後工程はすべて再計算になる。